法話2 写経のお話し-疫病除けから始まった写経-

写 経
嵯峨天皇は弘仁九年(八一八年)、全国に疫病が蔓延したことに対し、「朕の不徳にして多衆に何の罪かあらん」と、質素倹約に努められ、弘法大師の勧めにより四月二十六日から二十八日までの三日間をかけて、紺紙に金泥で一字三礼(一字書くごとに三回の礼拝を行う)の誠を尽くして般若心経を書写されると、霊験あらたか疫病はたちまちに治まり、大いなる功徳を得られたといいます。(般若心経秘鍵後記より)
この般若心経は「宸翰(天皇の真筆のこと)勅封(勅令により封印されたもの)般若心経」として京都の嵯峨にある大覚寺に納められており、六十年に一度のみ天下泰平を祈願するため開封されます。
近年、写経がブームとなり、色々な方が手軽に写経を楽しんでいます。写経は、印刷技術が無かった頃、お経を書写するということは布教の上でも当然のことであり、大変に重要なことでした。それこそ一字一字間違えないよう全身全霊をかけて行われたことでしょう。法華経に「この経を受持し、読誦し、解説し、書写し、説くの如く修行すれば、よく大願を成就す」とあり、平安時代以降は、修行のためにお経を写すという行為から、願意を叶えるための方法(信仰)として写経が普及しました。法華経の中の観音経なども数多く写経されていますが、写経といえばやはり般若心経が一番多く選ばれています。
般若心経は、正式には「般若波羅蜜多心経」といい、西遊記で有名な玄奘三蔵が漢訳した、二百七十六文字からなる比較的短いお経です。ただ、その内容は大乗仏教の空を説いた大変にすばらしいお経であり、天台宗の開祖伝教大師(最澄)や真言宗の開祖弘法大師(空海)をはじめ、多くの僧侶がその解説を行っております。
信仰の対象として行われてきた写経も、現在では、集中力を高め、リラクゼーションや癒し効果があると再認識され、文房具店でも数多くの写経用紙が販売されており、自宅でも気軽に行うことができるようになりました。信仰心が薄れたといわれる現代、少しでもお経に触れ、仏教を知る機会となればありがたいことです。しかし出来得る事なら、心から願うことを叶えるため全身全霊をかけて写経を行ってきた沢山の人々がいることを知り、写経を通じて仏教に興味を持っていただければと思います。
現在、多くのお寺で写経会も実施されております。そのような会に参加され、写経の作法を学ぶのも良いでしょう。
蔵王院でも、お気軽に写経ができるよう写経を行う場所を常設しております。ご予約の上ご来寺いただければいつでも写経を体験できます。また、写経用紙をお送りしご返送いただく「郵送写経」も受け付けておりますのでお気軽にお申し付けください。
お書きいただいた写経用紙は、大覚寺へと送り納経いたします。
納経お布施 1巻 1,000円
郵送写経お布施 1巻 2,000円
合掌
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