法話3 ご位牌は私たちとご先祖様を結ぶ大切な絆

東日本大震災の避難所で、おばあさんが大事そうに位牌を抱いている映像がありました。何は無くても位牌だけは持て逃げたのでしょう。ご先祖様を大切に想い敬うことを知っている日本人にとって、位牌とはご先祖様そのものなのです。

ご位牌が現在の中国より日本に伝わったのは鎌倉時代と言われています。鎌倉時代は中国の南宋にあたる時代で、宗教的にも大きな変化があった時代です。

南宋では礼節を重んじる儒教の教えが民衆にも広まっており、その一環として『朱子家礼(しゅしかれい)という現在で言う冠婚葬祭マニュアルの様な物が作られ、現在のお葬式の基が出来たと言われています。

その中には現在の位牌供養に当たる、「板に故人の名前を書いてご先祖様を供養する方法」も書かれています。

同じく、南宋で発展した仏教の宗派が禅宗です。日本でも永平寺など禅宗の流れを汲む寺院が、厳しい修行を行なうことで有名です。禅宗では戒律を重んじ様々な儀礼から日常の作法まで細かく規律が定められており、その規律に則った厳しい修行が行なわれていました。その規律をまとめたのが清規(しんぎ)』という書物です。当時、中国との正式な国交はありませんでしたが、栄西禅師や道元禅師をはじめ多くの僧侶が大陸に渡り最新の教えである禅宗を学びました。『清規』は一つではなくそれぞれの時代に編纂されていますが、元の時代に編纂された『禅林備用清規(ぜんりんびようしんぎ)』には「椅卓(いたく)に位牌を(なら)べ設け、香と灯を供養す。」と、位牌に関する記載も見られることから、『朱子家礼』の影響を受けた『清規』により、日本に位牌の文化が伝わったのでしょう。

それまでの日本の僧侶は日本の平和を祈ることが主の目的であり、葬儀を行うことにより死の(けが)れを受けることを嫌いました。しかし、戒律を守れば穢れることはないという禅宗の考え方が日本に伝わったことにより、『清規』に基づく葬儀が積極的に行われるようになったのです。

位牌とは死者の憑代(よりしろ)であり、死者そのものです。単なる板である位牌に僧侶が決められた作法(魂入れ・開眼(かいげん))をすることにより本当の位牌となります。

通夜・葬儀の時には白木の板に戒名が書かれた(または戒名紙が貼られた)位牌が使われます。仮位牌とか内位牌と言われ四十九日のご法要までの仮のご位牌です。四十九日のご法要までにご葬家は本位牌を用意します。本位牌にも様々な種類のものがあります。黒檀や紫檀を使った唐木(からき)の位牌。漆を塗り金粉や金箔を貼った塗りの位牌。また、何枚のも板位牌が納められた回出位牌(くりだしいはい)や、夫婦連名の夫婦位牌(めおといはい)。また、最近では現代仏壇に合ったカラフルな位牌やクリスタルの位牌もあります。位牌の大きさは、昔は天皇や大名の位牌など本人の身長と同じ大きさに造られたものもありますが、基本的には仏壇の大きさに合わせ造られるのが良いでしょう。

仮位牌に○○○○霊位と霊という字が入っている場合には、本位牌をお造りする時に○○○○位と、霊という字を抜きます。よく四十九日のご法要からは『御霊前』ではなく『御佛前』と熨斗袋(のしぶくろ)を使いますが、この違いはそこから来ているのです。

四十九日のご法要では、まず、僧侶は白木のご位牌の魂抜き(撥遣(はつけん))を行い、本位牌への魂入れ(開眼(かいげん))を行います。

ご位牌は私たちとご先祖様を結ぶ大切な絆です。ご先祖様がおられたからこそ今の自分たちがいるのです。ご先祖のいない人などどこにもいません。ご先祖様に感謝し敬うためにもご位牌を大切に、毎日ご仏壇に手を合わせ感謝の気持ちをお伝えしましょう。

*蔵王院ではご希望によりご位牌をお造りすることができます。

 すべて魂入れのご法要を行ってからお渡しいたしますので安心です。

合掌

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